中国ドラマ「如懿伝」感想

今年の春にBSで視聴した如懿伝の感想です。

- 概要

1735年、清の乾隆(けんりゅう)帝が即位すると、彼と幼い頃から愛を育んできた側室の如懿(にょい)は妃(ひ)に封じられる。だが如懿は、叔母と対立関係にあった皇太后や、皇帝の寵愛を巡る皇后、妃嬪たちの権力争いに巻き込まれるように。乾隆帝はそんな彼女を守り、如懿も持ち前の知恵を発揮し2人で支え合いながら困難を乗り越えていく。

2018年中国 全87話
原題:如懿传
原作・脚本:流瀲紫「宮廷の諍い女」
監督:汪俊「蒼穹の昴
出演者:周迅、霍建華、張鈞甯 他
引用:
韓国・中国・台湾ドラマ 如懿伝~紫禁城に散る宿命の王妃~ | BS11(イレブン)|全番組が無料放送

- きっかけ
数年前に周りでエイラク(原題:延禧攻略)にはまっている人が続出していて、清朝の時代劇だし中国語音声・字幕だと理解するのが難しいと思って日本語字幕が出るのを待っていました。
その後、地上波でエイラクの放送があり、初めて中国宮廷時代劇を見たんですが、すっかりハマりました。
ドラマに詳しい友達から同じ時代を描いていている如懿伝もいいよと薦めれられ、タイミングよくBS11で放送が始まったので視聴しました。

- エイラク(延禧攻略)と如懿伝
どちらも中国で2018年に放送されており、時代背景も同じなので、二作品を比較する記事や感想を多く見かけました。
同じ時代背景のドラマ「如懿伝」VS「延禧攻略」 軍配はどちらに?--人民網日本語版--人民日報

イラクは女官である主人公瓔珞が乾隆帝に愛されて出世していくサクセスストーリーです。いわゆる「顔芸」のような大袈裟な演技が含まれていて、所々笑えるシーンがあります。主人公の瓔珞はとにかく気が強くて、自分から喧嘩を仕掛けることはないけれど、やられたらやり返す場面は痛快です。
一方、如懿伝は主人公如懿と乾隆帝の愛情が主なテーマです。ですが、最初は愛し合っているけれど、後半へ物語が進むにつれて二人の愛情は冷めていき、かなり暗くて重たい展開になっていきます。全編を通して、しっとり落ち着いた雰囲気で、ユーモア要素はほぼありません(ちょっと笑えるのは、中盤に出番が増える進忠の場面くらいかな)

イラクと如懿伝、それぞれ魅力があるけれど、私のおすすめは如懿伝です!
- 如懿の魅力
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如懿は元々、青桜という名前なんですが、皇太后であるニオフル氏にお願いし「如懿」と新しい名前を付けてもらうシーンがあります。
その際、皇太后に望みは何だと聞かれ、
如懿は「永遠の愛を貫くこと」と答えます。
また、「如懿」の名前の由来ですが、皇太后は下記のように続けます。
「懿徳の懿の意味は静かなる美、出典は後漢書の鍾晧の故事である。
この世で最上の美は愛する者と過ごす日々だ。加えて静は動を制す、静であれば平安でいられる」

微博の公式アカウントでは如懿というキャラクターについて、各キャストが語る動画がありました。

对于如懿@i周迅 来说,想要在后宫生存下去,“我要是不再反击,我可能就没命了。”但是如懿这样一个有着现代女性思维、自主、坚强的角色,她也许并不愿意在深宫中进行争斗,她不忘初心,仍然坚持做着自己,“以一种爱的方式,活在人世间。”

引用:
《同行壹心 - 如懿传纪事》之《生存》 酷燃视频-优质短节目视频播放平台

このように、物語の中で如懿は自分から謀り事をすることはありません。
何も悪い事をしていなくても、ライバルである側室たちから命を狙われてしまう後宮ですが、如懿は知恵を絞り、悪事が自然と浮かび上がるように計画を立て、以守为攻(守りを以って攻めと為す)で乗り越えていきます。

如懿を演じる周迅の穏やかで抑えた演技は素晴らしく、冷静で品があり、内に秘めた強さがある如懿に引き込まれました。
所々で、心を許した人に見せる笑顔も可愛くて素敵です。

この作品の中で、ドラマでよくある登場人物の心の声のナレーションは入っていません。(如懿の気持ちを待女など周りの人物が「如懿様は〜といったお気持ちなのですね」と代弁するところはある)
台詞がなく、目や表情の演技で気持ちを表現している場面では演技力の高さを感じました。
如懿と凌雲徹が最期の別れとなる梅の木のシーンは特に印象的でした。
台詞がなくても、2人の目の演技から伝わってくるものがあり、悲しいけれど忘れられない好きなシーンです。

- 周りのキャラクターたち
全87話と長いので、如懿だけではなく周りのキャラクターたちもしっかり描かれています。
海蘭(張 鈞甯)
台湾の女優さんで、台湾ドラマの痞子英雄で美人監察医を演じていました。その時の印象でバリバリ仕事ができる女性のイメージでした。
最初は弱気な海蘭でしたが、どんどん逞しくなっていきます。
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李玉(黄 宥明)&凌雲徹(经 超)
太監と御前待衛のイケメンコンビです。
2人の活躍シーン、大好きでした。
李玉のちょっとブラックなところ、凌雲徹の不器用でまっすぐなところが良かったです。
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他にも皇太后や惢心、容佩、㯋嬪、寒香見など、とても魅力的でした。
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- とにかく映像と音楽が美しい
本物さながらの紫禁城のセットや小物、衣装、料理など細かいところまで本当に美しいです。
まるで美術館の展示を見ているような気分になれます。
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音楽はフルオーケストラで、美しい映像とぴったりで物語を盛り上げてくれます。
如懿が余命宣告を受けるシーンと嬿婉の悪事が暴かれるシーンで流れる「珍沉玉碎」が好きです。
‎ヴァリアス・アーティストの「電視劇《如懿傳》原聲帶」をApple Musicで

また、美男美女揃いでみんなスタイルがよいこと!
メインのキャストだけでなく、画面の後方に映るエキストラまで全員がお辞儀や歩き方などひとつひとつの所作がきれいで洗練されています。きっとたくさん訓練されたんだろうなぁと感じました。

- 蘭因絮果
如懿と乾隆帝との最後の別れのシーンで、「蘭因絮果」という言葉が出てきます。
「咲き誇る花もいずれ散るもの」
「男女の情が美しいのは最初だけ、やがて尽きる」
と、如懿と乾隆帝の台詞で表現されています。

如懿和乾隆皇帝斷情時,用了一個古代成語代表他們的愛情結局

「蘭因絮果」是什麼意思?「蘭因絮果」是古代一個成語,譯義是比喻男女間的愛情起初時很美滿,最終卻離異。蘭因:比喻美好的結合;絮果:比喻離散的結局。

引用:
https://kknews.cc/history/6z8zjxv.html

如懿伝は最初は愛し合っていた男女の心が次第に離れいき、終わりに向かっていく物語です。
物語が進むにつれて、乾隆帝の不誠実な言動に心乱されながら視聴しました。
愛情のきれいな部分だけでなく、疑念や嫉妬、不信感など決してきれいとはいえない側面も描かれており、見ていて辛くなる事も多かったです。

- 最後に
中国の宮廷ドラマは80話前後あり、長過ぎると思っていたけど、いざ見始めるとあっという間に時間が経ちます。
イラクも如懿伝も、物語が途中でもたつく感じはなく飽きませんでした。
数話単位で一つの事件が進むので、一つの事件が落ち着くまでまとめて見て、少し休憩して…の繰り返しで見るといいかもしれません。

如懿伝は、権勢や寵愛を巡り争いが繰り広げられる紫禁城で生きる登場人物たちの細かい心情の動きが描かれていて、今まで見た作品の中でも特に好きな1つになりました。
見終わった後はしばらくロスな気分になり、なかなか物語から抜け出せませんでした。
中国や中国語に少しでも興味があれば、ぜひ見てもらいたい作品です!